226.01

226.01
【分野】磁気記録

【タイトル】レーストラックメモリのビットエラー率を決定する新たな評価手法を確立

【出典】
・Mio Ishibashi, Masashi Kawaguchi, Yuki Hibino, Kay Yakushiji, Arata Tsukamoto, Satoru Nakatsuji and Masamitsu Hayashi
 “Decoding the magnetic bit positioning error in a ferrimagnetic racetrack”
 Sci. Adv. 10, eadq0898 (2024)
 DOI: 10.1126/sciadv.adq0898
 URL: https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adq0898
・東京大学 理学系研究科・理学部(プレスリリース)
 URL: https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/10545/

【概要】
東大理、産総研、日大理工のグループが次世代磁気メモリとして期待されているレーストラックメモリにおいて、ビット操作のエラー率を決定する新たな性能評価手法を確立し、フェリ磁性体細線に適用した。

【本文】
レーストラックメモリはストレージクラスの次世代メモリとして期待されているが、磁性細線中に並んだビット列の書き込みや移動操作の信頼性については、ビット操作のエラー率に関する情報がなかった。そこで、東大の石橋らはこのエラー率を決定するための新たな性能評価手法の確立を行った。フェリ磁性体を用いて作製した細線において、ナノ秒程度の電流パルスによるビットの書き込みとビット位置の操作を繰り返し行い(図1)、磁気光学Kerr効果顕微鏡の観察で得られた磁区画像からビット位置のばらつきを求めた。これによりビットエラー率を決定できることを実証した。フェリ磁性体細線の評価で得られたビットエラー率はビット長に依存せず、隣り合うビット間の相互作用が小さいことがわかった。これはフェリ磁性体の正味の磁化がゼロに近いためであると考えられる。また、ビット位置操作に用いる電流パルスが十分に大きい時、連続する操作のビットエラー率に相関がないことも分かった。この結果は、フェリ磁性体を用いることでレーストラックメモリのビットエラー率を低減できる可能性を示している。以上より、高密度磁気メモリに向けてフェリ磁性体が記録媒体として有効であることも示唆された。

(東京大学 谷内敏之)

図1. 実験シークエンスの概念図。(i)-(iv)フェリ磁性細線へのビットの書き込みと移動、及びそれぞれの場合に対応する磁気光学Kerr効果顕微鏡によって得られた磁区画像を示す。

磁気物理

前の記事

225.01